奈良時代の文学にみられる特徴

奈良時代に日本人によって日本語で書かれた文学作品の総称は、上代文学と呼ばれ、当時の日本には固有の文字がなかったため、初期の文献には中国語の漢字を使用して表記されています。

漢字の本来の意味とは関係なく、日本語で発音する音に合わせて漢字を当て書きしているため、現代では解読が非常に難しものとなっています。

上代文学の初期には、制約のために宮廷の貴族や学者などの限られた人だけのものでしたが、いったん民衆のものとなると、「万葉集」には一般民衆が詠んだ歌も含まれています。

奈良時代に生まれた文学の特徴について紹介します。

奈良時代に作られた文学作品には?

奈良時代に作られた文学作品には、日本の歴史書である「古事記」「日本書紀」、和歌集の「万葉集」、日本各地の言い伝えなどをまとめた「風土記」などがあげられます。

日本に固有の文字がなかったため、中国語の漢字を一文字ずつ、その文字の意味に関わらず日本語の一音節の表記に合わせて用いた「万葉仮名」が登場したのが、奈良時代の文学の最も際立った特徴です。

「古事記」や「日本書紀」の歌謡や訓注などに用いられている表記も、「万葉集」と同様に「万葉仮名」が用いられています。

「万葉集」にみられる奈良時代の文学の特徴

奈良時代初頭までの文学は、貴族や学者といったごく一部の限られた識字力を持った人たちだけのものでしたが、「万葉仮名」の登場で、一般庶民にまで広がりを持たせています。

特に、「万葉集」は天皇から一般庶民に至るまでさまざまな階級の人々の歌が収拾され、奈良時代の日本人を垣間見ることができる作品となっています。

万葉集の編纂を誰が行なったかは、明確には判明していないものの、橘諸兄、大伴家持、あるいは二人の共同編纂などの諸説があります。

約400年間にわたる作品が収められた「万葉集」は、時代によって歌風に変化がみられ、山部赤人、大伴旅人、山上憶良、高橋虫麻呂などの奈良時代の代表的な歌人達が、中国の唐の影響を受けた表現を使用した歌の特徴がみられます。

また、宮廷貴族の間では雅やかな歌が多く詠まれた一方、九州大宰府の防人などが詠んだ歌には、関東や東北から強制的に赴任させられた農民たちの悲哀や憂悶、切なさが表現された歌が詠まれ、権力者による一方的な支配も垣間見得ます。

奈良時代の文学にみられる特徴

奈良時代以前の文学は、日本固有の文字がなかったこともあり、宮廷や貴族、学者といったごく限られた人たちのものだったといえ、万葉仮名が使用されたことで、一般庶民に広がった特徴を持ちます。

「万葉集」には、万葉仮名を使用したさまざまな階級の人たちが詠んだ歌が収拾され、奈良時代の文学の特徴が表れています。

万葉仮名の使用は、平安時代以降のかなやカタカナといった日本特有の文字の誕生にもつながるキッカケにもなっています。

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