奈良時代には、遣唐使の派遣で唐を手本とした律令国家体制が確立され、公地公民の制が導入されると貴族と一般庶民にも身分制度が出来上がります。
朝廷に仕える貴族や官僚、一般庶民の中にも戸籍の有無によって良民と賎民に分けられ、服装についても良民は黄色、賎民は黒色のみを使用するといった決まりがありました。
しかも、身分の違いにより、明確な衣服の二分化が生じ、庶民は小袖を衣服として着用し、支配者階級にあたる貴族や朝廷の官僚などは手足が隠れる衣服を着用しています。
奈良時代に庶民が着用した服装や衣服に使われた素材などについて紹介します。
奈良時代の一般庶民の服装は?素材には?
奈良時代の一般庶民や下級役人の服装は、奈良時代以前と大差なく、麻の素材の服を着たと考えられ、中には自分の家で糸からつくった衣服もあったようです。
男性は脇の下が縫われていない上着を帯で結んで、下はふんどしの上に袴を付け、女性は脇の下を縫った上着に、スカートのようなものを着たとされています。
一般庶民の服装には、使用できる色が黄色と決められ、賎民など身分の低いものは黒と限定されていて、衣服令で襟を右前から合わせるような着方も規定されています。
服に使用される素材も、貴族が絹や高級な素材を利用したのに対して、庶民は麻を中心とした天然素材が利用されています。
奈良時代の服装に使われた素材がわかるのは?
奈良時代の服装がわかる遺物や資料からは、それまでの時代とは違い織物の織り方や染め方も高度な絹織物が供給できるようになっていたと考えられます。
しかし、絹の織物の素材となる養蚕は、天皇家で行われているほど高級なもので、美しい絹の織物を着ることができたのは支配者階級にあたる上流階級だったと考えられ、一般庶民の服装の素材ではありません。
綿の栽培が江戸時代に普及したことからも、庶民の服装の素材として、一般的には麻が使われていたと考えられます。
支配者階級と庶民の服装にみられる特徴は、奈良時代に書かれた「風土記」や「万葉集」などの記述からも推測され、こうぞや木の皮の繊維で織った布、蓑などの植物の繊維を利用した素材が活用されたことがわかります。
奈良時代の服装には、身分制度による階級の違いも?
律令制が確立した奈良時代には、支配者階級と被支配者階級のそれぞれに身分制度が生まれ、服装にもそれぞれの身分で違いが生じています。
支配者階級が身につける衣服の素材には、高級な絹の織物などが用いられ、庶民の衣服には、麻が一般的に使われ、植物の繊維を利用した素材なども活用されています。
朝廷に関わる人たちの服装については、養老律令の「衣服令」によって細かな決まりが定められています。