奈良時代に伝わった漆の技術

漆の利用は縄文時代に始まり、接着剤や塗料として長く使用され、漆器は日本を代表する優れた工芸品のひとつです。

弥生時代には、透き漆に油煙や鉄を混ぜて黒く色をつけた「黒漆」が大陸から伝わり、漆として主に使われています。

聖徳太子が摂政だった飛鳥時代に初めて伝わった仏教によって、漆の使われ方にも変化が生じて、仏具の装飾に使用されるようになります。

その後、中国大陸の唐の文化や仏教の影響を多大に受け、奈良時代の天平文化でも漆を使った工芸品や仏像などが数多く作られています。

仏具に漆絵が施された飛鳥時代

漆の樹は、中国から渡来した植物とも言われますが、日本に元々自生していたという説もあり、縄文時代には漆の利用が確認されていることからも、歴史的な文化を知る重要な手掛かりとなる存在です。

飛鳥時代に初めて日本に伝わった仏教によって、漆を使用した仏具が多く作られ、その中でも、法隆寺の国宝「玉虫厨子」が代表的な作品です。

その側面には「捨身飼虎図」が描かれた「玉虫厨子」は、1200年以上も前に作られた細かな細工が、全面に塗られた漆で現在まで当時のまま残っています。

遣隋使から遣唐使へと変わり、平城京へと遷都されて奈良時代にはいると、中国と朝鮮半島との交流が盛んになり、漆の基本的な技術が日本国内と大陸などから伝わったものが出揃っています。

奈良時代に用いられた漆の技法

日本国内で培われた漆の技法と中国や朝鮮半島から伝わった技法が集大成された奈良時代には、仏像に施す「脱乾漆」という技法が使われています。

奈良時代の傑作といわれる仏像彫刻の「阿修羅像」には、粘土で成型された原形に麻布を張り重ねて、その上を木粉と漆などを練り合わせた刻苧といわれる下地漆で細部を整え、漆を塗って仕上げる「脱乾漆」という技法が使われ、漆と布だけでつくられた仏像として世界的に有名です。

また、遣隋使によって蒔絵や螺鈿といった技法が伝えられ、正倉院では金銀を使った蒔絵や、螺鈿が施された漆器が数多く奉納されています。

奈良時代のこれらの漆の技法は、平安時代の「片輪車蒔絵螺鈿手箱」を生み出しています。

漆の基本的な技術が出揃った奈良時代

縄文時代から始まった漆の利用は、大陸から伝わった「黒漆」によって、漆が工芸品や仏具の装飾に使われるようになります。

接着力に優れ、耐水性、耐熱性、耐薬性とすべてに強い特性をもつ漆によって、1000年以上も前につくられた漆器を当時のまま伝えられ、唯一紫外線に弱い点も、黒色を出すことに利用されています。

飛鳥時代につくられた法隆寺の国宝「玉虫厨子」、奈良時代の傑作といわれる「阿修羅像」といった代表的な作品が、当時のまま現代に残されています。

奈良時代に構築された脱乾漆、蒔絵、螺鈿といった漆の技術は、現在の漆技術の元となっています。

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